1 - Podの概観

このページでは、Kubernetesのオブジェクトモデルにおいて、デプロイ可能な最小単位のオブジェクトであるPodに関して説明します。

Podについて理解する

Pod は、Kubernetesアプリケーションの基本的な実行単位です。これは、作成またはデプロイするKubernetesオブジェクトモデルの中で最小かつ最も単純な単位です。Podは、クラスターで実行されているプロセスを表します。

Podは、アプリケーションのコンテナ(いくつかの場合においては複数のコンテナ)、ストレージリソース、ユニークなネットワークIP、およびコンテナの実行方法を管理するオプションをカプセル化します。Podはデプロイメントの単位、すなわちKubernetesのアプリケーションの単一インスタンス で、単一のコンテナまたは密結合なリソースを共有する少数のコンテナで構成される場合があります。

DockerはKubernetesのPod内で使われる最も一般的なコンテナランタイムですが、Podは他のコンテナランタイムも同様にサポートしています。

Kubernetesクラスター内でのPodは2つの主な方法で使うことができます。

  • 単一のコンテナを稼働させるPod : いわゆる*「1Pod1コンテナ」* 構成のモデルは、最も一般的なKubernetesのユースケースです。 このケースでは、ユーザーはPodを単一のコンテナのラッパーとして考えることができ、Kubernetesはコンテナを直接扱うというよりは、Podを管理することになります。
  • 協調して稼働させる必要がある複数のコンテナを稼働させるPod : 単一のPodは、リソースを共有する必要があるような、密接に連携した複数の同じ環境にあるコンテナからなるアプリケーションをカプセル化することもできます。 これらの同じ環境にあるコンテナ群は、サービスの結合力の強いユニットを構成することができます。 -- 1つのコンテナが、共有されたボリュームからファイルをパブリックな場所に送信し、一方では分割されたサイドカー コンテナがそれらのファイルを更新します。そのPodはそれらのコンテナとストレージリソースを、単一の管理可能なエンティティとしてまとめます。

Kubernetes Blogにて、Podのユースケースに関するいくつかの追加情報を見ることができます。さらなる情報を得たい場合は、下記のページを参照ください。

各Podは、与えられたアプリケーションの単一のインスタンスを稼働するためのものです。もしユーザーのアプリケーションを水平にスケールさせたい場合(例: 複数インスタンスを稼働させる)、複数のPodを使うべきです。1つのPodは各インスタンスに対応しています。 Kubernetesにおいて、これは一般的に レプリケーション と呼ばれます。 レプリケーションされたPodは、通常コントローラーと呼ばれる抽象概念によって単一のグループとして作成、管理されます。 さらなる情報に関してはPodとコントローラーを参照して下さい。

Podがどのように複数のコンテナを管理しているか

Podは凝集性の高いサービスのユニットを構成するような複数の協調プロセス(コンテナ)をサポートするためにデザインされました。 単一のPod内のコンテナ群は、クラスター内において同一の物理マシンもしくは仮想マシン上において自動で同じ環境に配備され、スケジュールされます。コンテナはリソースや依存関係を共有し、お互いにコミュニケートし、それらがいつ、どのように削除されるかを調整できます。

注意点として、単一のPod内で同じ環境に配備され、同時管理される複数のコンテナをグルーピングするのは、比較的に発展的なユースケースとなります。 ユーザーは、コンテナ群が密接に連携するような、特定のインスタンスにおいてのみこのパターンを使用するべきです。 例えば、ユーザーが共有ボリューム内にあるファイル用のWebサーバとして稼働するコンテナと、下記のダイアグラムにあるような、リモートのソースからファイルを更新するような分離されたサイドカー コンテナを持っているような場合です。

Podのダイアグラム

Podは、Podによって構成されたコンテナ群のために2種類の共有リソースを提供します。 ネットワーキングストレージ です。

ネットワーキング

各Podは固有のIPアドレスを割り当てられます。単一のPod内の各コンテナは、IPアドレスやネットワークポートを含む、そのネットワークの名前空間を共有します。Pod内の コンテナはlocalhostを使用してお互いに疎通できます。単一のPod内のコンテナがPod外 のエンティティと疎通する場合、共有されたネットワークリソース(ポートなど)をどのように使うかに関して調整しなければなりません。

ストレージ

単一のPodは共有されたストレージボリュームのセットを指定できます。Pod内の全てのコンテナは、その共有されたボリュームにアクセスでき、コンテナ間でデータを共有することを可能にします。ボリュームもまた、もしPod内のコンテナの1つが再起動が必要になった場合に備えて、データを永続化できます。 単一のPod内での共有ストレージをKubernetesがどう実装しているかについてのさらなる情報については、Volumesを参照してください。

Podを利用する

ユーザーはまれに、Kubenetes内で独立したPodを直接作成する場合があります(シングルトンPodなど)。 これはPodが比較的、一時的な使い捨てエンティティとしてデザインされているためです。Podが作成された時(ユーザーによって直接的、またはコントローラーによって間接的に作成された場合)、ユーザーのクラスター内の単一のノード上で稼働するようにスケジューリングされます。そのPodはプロセスが停止されたり、Podオブジェクトが削除されたり、Podがリソースの欠如のために追い出され たり、ノードが故障するまでノード上に残り続けます。

備考: 単一のPod内でのコンテナを再起動することと、そのPodを再起動することを混同しないでください。Podはそれ自体は実行されませんが、コンテナが実行される環境であり、削除されるまで存在し続けます。

Podは、Podそれ自体によって自己修復しません。もし、稼働されていないノード上にPodがスケジュールされた場合や、スケジューリング操作自体が失敗した場合、Podが削除されます。同様に、Podはリソースの欠如や、ノードのメンテナンスによる追い出しがあった場合はそこで停止します。Kubernetesはコントローラー と呼ばれる高レベルの抽象概念を使用し、それは比較的使い捨て可能なPodインスタンスの管理を行います。 このように、Podを直接使うのは可能ですが、コントローラーを使用したPodを管理する方がより一般的です。KubernetesがPodのスケーリングと修復機能を実現するためにコントローラーをどのように使うかに関する情報はPodとコントローラーを参照してください。

Podとコントローラー

単一のコントローラーは、ユーザーのために複数のPodを作成・管理し、レプリケーションやロールアウト、クラスターのスコープ内で自己修復の機能をハンドリングします。例えば、もしノードが故障した場合、コントローラーは異なるノード上にPodを置き換えるようにスケジューリングすることで、自動的にリプレース可能となります。

1つまたはそれ以上のPodを含むコントローラーの例は下記の通りです。

通常は、コントローラーはユーザーが作成したPodテンプレートを使用して、担当するPodを作成します。

Podテンプレート

Podテンプレートは、ReplicationControllerJobや、 DaemonSetのような他のオブジェクト内で含まれるPodの仕様となります。 コントローラーは実際のPodを作成するためにPodテンプレートを使用します。 下記のサンプルは、メッセージを表示する単一のコンテナを含んだ、シンプルなPodのマニフェストとなります。

apiVersion: v1
kind: Pod
metadata:
  name: myapp-pod
  labels:
    app: myapp
spec:
  containers:
  - name: myapp-container
    image: busybox
    command: ['sh', '-c', 'echo Hello Kubernetes! && sleep 3600']

全てのレプリカの現在の理想的な状態を指定するというよりも、Podテンプレートはクッキーの抜き型のようなものです。一度クッキーがカットされると、そのクッキーは抜き型から離れて関係が無くなります。そこにはいわゆる”量子もつれ”といったものはありません。テンプレートに対するその後の変更や新しいテンプレートへの切り替えは、すでに作成されたPod上には直接的な影響はありません。 同様に、ReplicationControllerによって作成されたPodは、変更後に直接更新されます。これはPodとの意図的な違いとなり、そのPodに属する全てのコンテナの現在の理想的な状態を指定します。このアプローチは根本的にシステムのセマンティクスを単純化し、機能の柔軟性を高めます。

次の項目

2 - Podのライフサイクル

このページではPodのライフサイクルについて説明します。Podは定義されたライフサイクルに従い Pendingフェーズから始まり、少なくとも1つのプライマリーコンテナが正常に開始した場合はRunningを経由し、次に失敗により終了したコンテナの有無に応じて、SucceededまたはFailedフェーズを経由します。

Podの実行中、kubeletはコンテナを再起動して、ある種の障害を処理できます。Pod内で、Kubernetesはさまざまなコンテナのステータスを追跡して、対処します。

Kubernetes APIでは、Podには仕様と実際のステータスの両方があります。Podオブジェクトのステータスは、PodのConditionのセットで構成されます。カスタムのReadiness情報をPodのConditionデータに挿入することもできます。

Podはその生存期間に1回だけスケジューリングされます。PodがNodeにスケジュール(割り当て)されると、Podは停止または終了するまでそのNode上で実行されます。

Podのライフタイム

個々のアプリケーションコンテナと同様に、Podは(永続的ではなく)比較的短期間の存在と捉えられます。Podが作成されると、一意のID(UID)が割り当てられ、(再起動ポリシーに従って)終了または削除されるまでNodeで実行されるようにスケジュールされます。
ノードが停止した場合、そのNodeにスケジュールされたPodは、タイムアウト時間の経過後に削除されます。

Pod自体は、自己修復しません。Podがnodeにスケジュールされ、その後に失敗、またはスケジュール操作自体が失敗した場合、Podは削除されます。同様に、リソースの不足またはNodeのメンテナンスによりポッドはNodeから立ち退きます。Kubernetesは、比較的使い捨てのPodインスタンスの管理作業を処理する、controllerと呼ばれる上位レベルの抽象化を使用します。

特定のPod(UIDで定義)は新しいNodeに"再スケジュール"されません。代わりに、必要に応じて同じ名前で、新しいUIDを持つ同一のPodに置き換えることができます。

volumeなど、Podと同じ存続期間を持つものがあると言われる場合、それは(そのUIDを持つ)Podが存在する限り存在することを意味します。そのPodが何らかの理由で削除された場合、たとえ同じ代替物が作成されたとしても、関連するもの(例えばボリューム)も同様に破壊されて再作成されます。

Podの図

file puller(ファイル取得コンテナ)とWebサーバーを含むマルチコンテナのPod。コンテナ間の共有ストレージとして永続ボリュームを使用しています。

Podのフェーズ

Podのstatus項目はPodStatusオブジェクトで、それはphaseのフィールドがあります。

Podのフェーズは、そのPodがライフサイクルのどの状態にあるかを、簡単かつ高レベルにまとめたものです。このフェーズはコンテナやPodの状態を包括的にまとめることを目的としたものではなく、また包括的なステートマシンでもありません。

Podの各フェーズの値と意味は厳重に守られています。ここに記載されているもの以外にphaseの値は存在しないと思ってください。

これらがphaseの取りうる値です。

概要
PendingPodがKubernetesクラスターによって承認されましたが、1つ以上のコンテナがセットアップされて稼働する準備ができていません。これには、スケジュールされるまでの時間と、ネットワーク経由でイメージをダウンロードするための時間などが含まれます。
RunningPodがNodeにバインドされ、すべてのコンテナが作成されました。少なくとも1つのコンテナがまだ実行されているか、開始または再起動中です。
SucceededPod内のすべてのコンテナが正常に終了し、再起動されません。
FailedPod内のすべてのコンテナが終了し、少なくとも1つのコンテナが異常終了しました。つまり、コンテナはゼロ以外のステータスで終了したか、システムによって終了されました。
Unknown何らかの理由によりPodの状態を取得できませんでした。このフェーズは通常はPodのホストとの通信エラーにより発生します。

Nodeが停止するか、クラスタの残りの部分から切断された場合、Kubernetesは失われたNode上のすべてのPodのPhaseをFailedに設定するためのポリシーを適用します。

コンテナのステータス

Pod全体のフェーズと同様に、KubernetesはPod内の各コンテナの状態を追跡します。container lifecycle hooksを使用して、コンテナのライフサイクルの特定のポイントで実行するイベントをトリガーできます。

PodがschedulerによってNodeに割り当てられると、kubeletはcontainer runtimeを使用してコンテナの作成を開始します。コンテナの状態はWaitingRunningまたはTerminatedの3ついずれかです。

Podのコンテナの状態を確認するにはkubectl describe pod [POD_NAME]のコマンドを使用します。Pod内のコンテナごとにStateの項目として表示されます。

各状態の意味は次のとおりです。

Waiting

コンテナがRunningまたはTerminatedのいずれの状態でもない場合コンテナはWaitingの状態になります。Waiting状態のコンテナは引き続きコンテナイメージレジストリからイメージを取得したりSecretを適用したりするなど必要な操作を実行します。Waiting状態のコンテナを持つPodに対してkubectlコマンドを使用すると、そのコンテナがWaitingの状態である理由の要約が表示されます。

Running

Running状態はコンテナが問題なく実行されていることを示します。コンテナがRunning状態に入る前にpostStartフック(もしあれば)が実行されます。Running状態のコンテナを持つPodに対してkubectlコマンドを使用すると、そのコンテナがRunning状態になった時刻が表示されます。

Terminated

Terminated状態のコンテナは実行されて、完了したときまたは何らかの理由で失敗したことを示します。Terminated状態のコンテナを持つPodに対してkubectlコマンドを使用すると、いずれにせよ理由と終了コード、コンテナの開始時刻と終了時刻が表示されます。

コンテナがTerminatedに入る前にpreStopフックがあれば実行されます。

コンテナの再起動ポリシー

Podのspecには、Always、OnFailure、またはNeverのいずれかの値を持つrestartPolicyフィールドがあります。デフォルト値はAlwaysです。

restartPolicyは、Pod内のすべてのコンテナに適用されます。restartPolicyは、同じNode上のkubeletによるコンテナの再起動のみを参照します。Pod内のコンテナが終了した後、kubeletは5分を上限とする指数バックオフ遅延(10秒、20秒、40秒...)でコンテナを再起動します。コンテナが10分間問題なく実行されると、kubeletはコンテナの再起動バックオフタイマーをリセットします。

PodのCondition

PodにはPodStatusがあります。それはPodが成功したかどうかの情報を持つPodConditionsの配列です。

  • PodScheduled: PodがNodeにスケジュールされました。
  • ContainersReady: Pod内のすべてのコンテナが準備できた状態です。
  • Initialized: すべてのInitコンテナが正常に実行されました。
  • Ready: Podはリクエストを処理でき、一致するすべてのサービスの負荷分散プールに追加されます。
フィールド名内容
typeこのPodの状態の名前です。
statusその状態が適用可能かどうか示します。可能な値は"True"と"False"、"Unknown"のうちのいずれかです。
lastProbeTimePod Conditionが最後に確認されたときのタイムスタンプが表示されます。
lastTransitionTime最後にPodのステータスの遷移があった際のタイムスタンプが表示されます。
reason最後の状態遷移の理由を示す、機械可読のアッパーキャメルケースのテキストです。
messageステータスの遷移に関する詳細を示す人間向けのメッセージです。

PodのReadiness

FEATURE STATE: Kubernetes v1.14 [stable]

追加のフィードバックやシグナルをPodStatus:_Pod readiness_に注入できるようにします。これを使用するには、PodのspecreadinessGatesを設定して、kubeletがPodのReadinessを評価する追加の状態のリストを指定します。

ReadinessゲートはPodのstatus.conditionsフィールドの現在の状態によって決まります。KubernetesがPodのstatus.conditionsフィールドでそのような状態を発見できない場合、ステータスはデフォルトでFalseになります。

以下はその例です。

Kind: Pod
...
spec:
  readinessGates:
    - conditionType: "www.example.com/feature-1"
status:
  conditions:
    - type: Ready  # これはビルトインのPodCondition
      status: "False"
      lastProbeTime: null
      lastTransitionTime: 2018-01-01T00:00:00Z
    - type: "www.example.com/feature-1"   # 追加のPodCondition
      status: "False"
      lastProbeTime: null
      lastTransitionTime: 2018-01-01T00:00:00Z
  containerStatuses:
    - containerID: docker://abcd...
      ready: true
...

PodのConditionは、Kubernetesのlabel key formatに準拠している必要があります。

PodのReadinessの状態

kubectl patchコマンドはオブジェクトステータスのパッチ適用をまだサポートしていません。Podにこれらのstatus.conditionsを設定するには、アプリケーションとoperatorsPATCHアクションを使用する必要があります。Kubernetes client libraryを使用して、PodのReadinessのためにカスタムのPodのConditionを設定するコードを記述できます。

カスタムのPodのConditionが導入されるとPodは次の両方の条件に当てはまる場合のみ準備できていると評価されます:

  • Pod内のすべてのコンテナが準備完了している。
  • ReadinessGatesで指定された条件が全てTrueである。

Podのコンテナは準備完了ですが、少なくとも1つのカスタムのConditionが欠落しているか「False」の場合、kubeletはPodのConditionContainersReadyに設定します。

コンテナのProbe

Probekubelet により定期的に実行されるコンテナの診断です。診断を行うために、kubeletはコンテナに実装された Handlerを呼びます。Handlerには次の3つの種類があります:

  • ExecAction: コンテナ内で特定のコマンドを実行します。コマンドがステータス0で終了した場合に診断を成功と見まします。

  • TCPSocketAction: PodのIPの特定のポートにTCPチェックを行います。 そのポートが空いていれば診断を成功とみなします。

  • HTTPGetAction: PodのIPの特定のポートとパスに対して、HTTP GETのリクエストを送信します。 レスポンスのステータスコードが200以上400未満の際に診断を成功とみなします。

各Probe 次の3つのうちの一つの結果を持ちます:

  • Success: コンテナの診断が成功しました。
  • Failure: コンテナの診断が失敗しました。
  • Unknown: コンテナの診断が失敗し、取れるアクションがありません。

Kubeletは3種類のProbeを実行中のコンテナで行い、また反応することができます:

  • livenessProbe: コンテナが動いているかを示します。 livenessProbe に失敗すると、kubeletはコンテナを殺します、そしてコンテナはrestart policyに従います。 コンテナにlivenessProbeが設定されていない場合、デフォルトの状態はSuccessです。

  • readinessProbe: コンテナがリクエスト応答する準備ができているかを示します。 readinessProbeに失敗すると、エンドポイントコントローラーにより、ServiceからそのPodのIPアドレスが削除されます。 initial delay前のデフォルトのreadinessProbeの初期値はFailureです。 コンテナにreadinessProbeが設定されていない場合、デフォルトの状態はSuccessです。

  • startupProbe: コンテナ内のアプリケーションが起動したかどうかを示します。 startupProbeが設定された場合、完了するまでその他のすべてのProbeは無効になります。 startupProbeに失敗すると、kubeletはコンテナを殺します、そしてコンテナはrestart policyに従います。 コンテナにstartupProbeが設定されていない場合、デフォルトの状態はSuccessです。

livenessProbe、readinessProbeまたはstartupProbeを設定する方法の詳細については、Liveness Probe、Readiness ProbeおよびStartup Probeを使用するを参照してください。

livenessProbeをいつ使うべきか?

FEATURE STATE: Kubernetes v1.0 [stable]

コンテナ自体に問題が発生した場合や状態が悪くなった際にクラッシュすることができればlivenessProbeは不要です. この場合kubeletが自動でPodのrestartPolicyに基づいたアクションを実行します。

Probeに失敗したときにコンテナを殺したり再起動させたりするには、livenessProbeを設定しrestartPolicyをAlwaysまたはOnFailureにします。

readinessProbeをいつ使うべきか?

FEATURE STATE: Kubernetes v1.0 [stable]

Probeが成功したときにのみPodにトラフィックを送信したい場合は、readinessProbeを指定します。 この場合readinessProbeはlivenessProbeと同じになる可能性がありますが、readinessProbeが存在するということは、Podがトラフィックを受けずに開始され、Probe成功が開始した後でトラフィックを受け始めることになります。コンテナが起動時に大きなデータ、構成ファイル、またはマイグレーションを読み込む必要がある場合は、readinessProbeを指定します。

コンテナがメンテナンスのために停止できるようにするには、livenessProbeとは異なる、特定のエンドポイントを確認するreadinessProbeを指定することができます。

備考: Podが削除されたときにリクエストを来ないようにするためには必ずしもreadinessProbeが必要というわけではありません。Podの削除時にはreadinessProbeが存在するかどうかに関係なくPodは自動的に自身をunreadyにします。Pod内のコンテナが停止するのを待つ間Podはunreadyのままです。

startupProbeをいつ使うべきか?

FEATURE STATE: Kubernetes v1.16 [alpha]

startupProbeは、サービスの開始に時間がかかるコンテナを持つポッドに役立ちます。livenessProbeの間隔を長く設定するのではなく、コンテナの起動時に別のProbeを構成して、livenessProbeの間隔よりも長い時間を許可できます。 コンテナの起動時間が、initialDelaySeconds + failureThreshold x periodSecondsよりも長い場合は、livenessProbeと同じエンドポイントをチェックするためにstartupProbeを指定します。periodSecondsのデフォルトは30秒です。次に、failureThresholdをlivenessProbeのデフォルト値を変更せずにコンテナが起動できるように、十分に高い値を設定します。これによりデッドロックを防ぐことができます。

Podの終了

Podは、クラスター内のNodeで実行中のプロセスを表すため、不要になったときにそれらのプロセスを正常に終了できるようにすることが重要です(対照的なケースは、KILLシグナルで強制終了され、クリーンアップする機会がない場合)。

ユーザーは削除を要求可能であるべきで、プロセスがいつ終了するかを知ることができなければなりませんが、削除が最終的に完了することも保証できるべきです。ユーザーがPodの削除を要求すると、システムはPodが強制終了される前に意図された猶予期間を記録および追跡します。強制削除までの猶予期間がある場合、kubelet正常な終了を試みます。

通常、コンテナランタイムは各コンテナのメインプロセスにTERMシグナルを送信します。猶予期間が終了すると、プロセスにKILLシグナルが送信され、PodはAPI Serverから削除されます。プロセスの終了を待っている間にkubeletかコンテナランタイムの管理サービスが再起動されると、クラスターは元の猶予期間を含めて、最初からリトライされます。

フローの例は下のようになります。

  1. ユーザーがデフォルトの猶予期間(30秒)でPodを削除するためにkubectlコマンドを送信する。
  2. API server内のPodは、猶予期間を越えるとPodが「死んでいる」と見なされるように更新される。
    削除中のPodに対してkubectl describeコマンドを使用すると、Podは「終了中」と表示される。
    Podが実行されているNode上で、Podが終了しているとマークされている(正常な終了期間が設定されている)とkubeletが認識するとすぐに、kubeletはローカルでPodの終了プロセスを開始します。
    1. Pod内のコンテナの1つがpreStopフックを定義している場合は、コンテナの内側で呼び出される。猶予期間が終了した後も preStopフックがまだ実行されている場合は、一度だけ猶予期間を延長される(2秒)。
      備考: preStopフックが完了するまでにより長い時間が必要な場合は、terminationGracePeriodSecondsを変更する必要があります。
    2. kubeletはコンテナランタイムをトリガーして、コンテナ内のプロセス番号1にTERMシグナルを送信する。
      備考: Pod内のすべてのコンテナが同時にTERMシグナルを受信するわけではなく、シャットダウンの順序が問題になる場合はそれぞれにpreStopフックを使用して同期することを検討する。
  3. kubeletが正常な終了を開始すると同時に、コントロールプレーンは、終了中のPodをEndpoints(および有効な場合はEndpointSlice)オブジェクトから削除します。これらのオブジェクトは、selectorが設定されたServiceを表します。ReplicaSetsとその他のワークロードリソースは、終了中のPodを有効なサービス中のReplicaSetとして扱いません。ゆっくりと終了するPodは、(サービスプロキシーのような)ロードバランサーが終了猶予期間が_始まる_とエンドポイントからそれらのPodを削除するので、トラフィックを継続して処理できません。
  4. 猶予期間が終了すると、kubeletは強制削除を開始する。コンテナランタイムは、Pod内でまだ実行中のプロセスにSIGKILLを送信する。kubeletは、コンテナランタイムが非表示のpauseコンテナを使用している場合、そのコンテナをクリーンアップします。
  5. kubeletは猶予期間を0(即時削除)に設定することでAPI server上のPodの削除を終了する。
  6. API serverはPodのAPIオブジェクトを削除し、クライアントからは見えなくなります。

Podの強制削除

注意: 強制削除は、Podによっては潜在的に危険な場合があるため、慎重に実行する必要があります。

デフォルトでは、すべての削除は30秒以内に正常に行われます。kubectl delete コマンドは、ユーザーがデフォルト値を上書きして独自の値を指定できるようにする --grace-period=<seconds> オプションをサポートします。

--grace-period0に設定した場合、PodはAPI serverから即座に強制的に削除されます。PodがNode上でまだ実行されている場合、その強制削除によりkubeletがトリガーされ、すぐにクリーンアップが開始されます。

備考: 強制削除を実行するために --grace-period=0 と共に --force というフラグを追加で指定する必要があります。

強制削除が実行されると、API serverは、Podが実行されていたNode上でPodが停止されたというkubeletからの確認を待ちません。API内のPodは直ちに削除されるため、新しいPodを同じ名前で作成できるようになります。Node上では、すぐに終了するように設定されるPodは、強制終了される前にわずかな猶予期間が与えられます。

StatefulSetのPodについては、StatefulSetからPodを削除するためのタスクのドキュメントを参照してください。

失敗したPodのガベージコレクション

失敗したPodは人間またはcontrollerが明示的に削除するまで存在します。

コントロールプレーンは終了状態のPod(SucceededまたはFailedのphaseを持つ)の数が設定された閾値(kube-controller-manager内のterminated-pod-gc-thresholdによって定義される)を超えたとき、それらのPodを削除します。これはPodが作成されて時間とともに終了するため、リソースリークを避けます。

次の項目

3 - Initコンテナ

このページでは、Initコンテナについて概観します。Initコンテナとは、Pod内でアプリケーションコンテナの前に実行される特別なコンテナです。 Initコンテナにはアプリケーションコンテナのイメージに存在しないセットアップスクリプトやユーティリティーを含めることができます。

Initコンテナは、Podの仕様のうちcontainersという配列(これがアプリケーションコンテナを示します)と並べて指定します。

Initコンテナを理解する

単一のPodは、Pod内にアプリケーションを実行している複数のコンテナを持つことができますが、同様に、アプリケーションコンテナが起動する前に実行されるInitコンテナも1つ以上持つことができます。

Initコンテナは下記の項目をのぞいて、通常のコンテナと全く同じものとなります。

  • Initコンテナは常に完了するまで稼働します。
  • 各Initコンテナは、次のInitコンテナが稼働する前に正常に完了しなくてはなりません。

もしあるPodの単一のInitコンテナが失敗した場合、KubernetesはInitコンテナが成功するまで何度もそのPodを再起動します。しかし、もしそのPodのrestartPolicyがNeverの場合、再起動されません。

PodにInitコンテナを指定するためには、Podの仕様にそのアプリケーションのcontainers配列と並べて、initContainersフィールドをContainer型のオブジェクトの配列として指定してください。 Initコンテナのステータスは、.status.initContainerStatusesフィールドにコンテナのステータスの配列として返されます(.status.containerStatusesと同様)。

通常のコンテナとの違い

Initコンテナは、リソースリミット、ボリューム、セキュリティ設定などのアプリケーションコンテナの全てのフィールドと機能をサポートしています。しかし、Initコンテナに対するリソースリクエストやリソースリミットの扱いは異なります。リソースにて説明します。

また、InitコンテナはそのPodの準備ができる前に完了しなくてはならないため、lifecyclelivenessProbereadinessProbeおよびstartupProbeをサポートしていません。

複数のInitコンテナを単一のPodに対して指定した場合、KubeletはそれらのInitコンテナを1つずつ順番に実行します。各Initコンテナは、次のInitコンテナが稼働する前に正常終了しなくてはなりません。全てのInitコンテナの実行が完了すると、KubeletはPodのアプリケーションコンテナを初期化し、通常通り実行します。

Initコンテナを使用する

Initコンテナはアプリケーションコンテナのイメージとは分離されているため、コンテナの起動に関連したコードにおいていくつかの利点があります。

  • Initコンテナはアプリケーションのイメージに存在しないセットアップ用のユーティリティーやカスタムコードを含むことができます。例えば、セットアップ中にsedawkpythonや、digのようなツールを使うためだけに、別のイメージを元にしてアプリケーションイメージを作る必要がなくなります。
  • アプリケーションイメージをビルドする役割とデプロイする役割は、共同で単一のアプリケーションイメージをビルドする必要がないため、それぞれ独立して実施することができます。
  • Initコンテナは同一Pod内のアプリケーションコンテナと別のファイルシステムビューで稼働することができます。その結果、アプリケーションコンテナがアクセスできないSecretに対するアクセス権限を得ることができます。
  • Initコンテナはアプリケーションコンテナが開始する前に完了するまで実行されるため、Initコンテナを使用することで、特定の前提条件が満たされるまでアプリケーションコンテナの起動をブロックしたり遅らせることができます。前提条件が満たされると、Pod内の全てのアプリケーションコンテナを並行して起動することができます。
  • Initコンテナはアプリケーションコンテナイメージの安全性を低下させるようなユーティリティーやカスタムコードを安全に実行することができます。不必要なツールを分離しておくことで、アプリケーションコンテナイメージのアタックサーフィスを制限することができます。

Initコンテナを活用する方法について、いくつかのアイデアを次に示します。

  • シェルコマンドを使って単一のServiceが作成されるのを待機する。

    for i in {1..100}; do sleep 1; if dig myservice; then exit 0; fi; done; exit 1
    
  • 以下のようなコマンドを使って下位のAPIからPodの情報をリモートサーバに登録する。

    curl -X POST http://$MANAGEMENT_SERVICE_HOST:$MANAGEMENT_SERVICE_PORT/register -d 'instance=$(<POD_NAME>)&ip=$(<POD_IP>)'
    
  • 以下のようなコマンドを使ってアプリケーションコンテナの起動を待機する。

    sleep 60
    
  • gitリポジトリをVolumeにクローンする。

  • いくつかの値を設定ファイルに配置し、メインのアプリケーションコンテナのための設定ファイルを動的に生成するためのテンプレートツールを実行する。例えば、そのPodのPOD_IPの値を設定ファイルに配置し、Jinjaを使ってメインのアプリケーションコンテナの設定ファイルを生成する。

Initコンテナの具体的な使用方法

下記の例は2つのInitコンテナを含むシンプルなPodを定義しています。 1つ目のInitコンテナはmyserviesの起動を、2つ目のInitコンテナはmydbの起動をそれぞれ待ちます。両方のInitコンテナの実行が完了すると、Podはspecセクションにあるアプリケーションコンテナを実行します。

apiVersion: v1
kind: Pod
metadata:
  name: myapp-pod
  labels:
    app: myapp
spec:
  containers:
  - name: myapp-container
    image: busybox:1.28
    command: ['sh', '-c', 'echo The app is running! && sleep 3600']
  initContainers:
  - name: init-myservice
    image: busybox:1.28
    command: ['sh', '-c', "until nslookup myservice.$(cat /var/run/secrets/kubernetes.io/serviceaccount/namespace).svc.cluster.local; do echo waiting for myservice; sleep 2; done"]
  - name: init-mydb
    image: busybox:1.28
    command: ['sh', '-c', "until nslookup mydb.$(cat /var/run/secrets/kubernetes.io/serviceaccount/namespace).svc.cluster.local; do echo waiting for mydb; sleep 2; done"]

次のコマンドを実行して、このPodを開始できます。

kubectl apply -f myapp.yaml
pod/myapp-pod created

そして次のコマンドでステータスを確認します。

kubectl get -f myapp.yaml
NAME        READY     STATUS     RESTARTS   AGE
myapp-pod   0/1       Init:0/2   0          6m

より詳細な情報は次のコマンドで確認します。

kubectl describe -f myapp.yaml
Name:          myapp-pod
Namespace:     default
[...]
Labels:        app=myapp
Status:        Pending
[...]
Init Containers:
  init-myservice:
[...]
    State:         Running
[...]
  init-mydb:
[...]
    State:         Waiting
      Reason:      PodInitializing
    Ready:         False
[...]
Containers:
  myapp-container:
[...]
    State:         Waiting
      Reason:      PodInitializing
    Ready:         False
[...]
Events:
  FirstSeen    LastSeen    Count    From                      SubObjectPath                           Type          Reason        Message
  ---------    --------    -----    ----                      -------------                           --------      ------        -------
  16s          16s         1        {default-scheduler }                                              Normal        Scheduled     Successfully assigned myapp-pod to 172.17.4.201
  16s          16s         1        {kubelet 172.17.4.201}    spec.initContainers{init-myservice}     Normal        Pulling       pulling image "busybox"
  13s          13s         1        {kubelet 172.17.4.201}    spec.initContainers{init-myservice}     Normal        Pulled        Successfully pulled image "busybox"
  13s          13s         1        {kubelet 172.17.4.201}    spec.initContainers{init-myservice}     Normal        Created       Created container with docker id 5ced34a04634; Security:[seccomp=unconfined]
  13s          13s         1        {kubelet 172.17.4.201}    spec.initContainers{init-myservice}     Normal        Started       Started container with docker id 5ced34a04634

このPod内のInitコンテナのログを確認するためには、次のコマンドを実行します。

kubectl logs myapp-pod -c init-myservice # 1つ目のInitコンテナを調査する
kubectl logs myapp-pod -c init-mydb      # 2つ目のInitコンテナを調査する

この時点で、これらのInitコンテナはmydbmyserviceという名前のServiceの検出を待機しています。

これらのServiceを検出させるための構成は以下の通りです。

---
apiVersion: v1
kind: Service
metadata:
  name: myservice
spec:
  ports:
  - protocol: TCP
    port: 80
    targetPort: 9376
---
apiVersion: v1
kind: Service
metadata:
  name: mydb
spec:
  ports:
  - protocol: TCP
    port: 80
    targetPort: 9377

mydbおよびmyserviceというServiceを作成するために、以下のコマンドを実行します。

kubectl apply -f services.yaml
service/myservice created
service/mydb created

Initコンテナが完了し、myapp-podというPodがRunning状態に移行したことが確認できます。

kubectl get -f myapp.yaml
NAME        READY     STATUS    RESTARTS   AGE
myapp-pod   1/1       Running   0          9m

このシンプルな例を独自のInitコンテナを作成する際の参考にしてください。次の項目にさらに詳細な使用例に関するリンクがあります。

Initコンテナのふるまいに関する詳細

Podの起動時は各Initコンテナが起動状態となるまで、kubeletはネットワーキングおよびストレージを利用可能な状態にしません。また、kubeletはPodのspecに定義された順番に従ってPodのInitコンテナを起動します。各Initコンテナは次のInitコンテナが起動する前に正常に終了しなくてはなりません。もしあるInitコンテナがランタイムもしくはエラーにより起動失敗した場合、そのPodのrestartPolicyの値に従ってリトライされます。しかし、もしPodのrestartPolicyAlwaysに設定されていた場合、InitコンテナのrestartPolicyOnFailureが適用されます。

Podは全てのInitコンテナが完了するまでReady状態となりません。Initコンテナ上のポートはServiceによって集約されません。初期化中のPodのステータスはPendingとなりますが、Initializedという値はtrueとなります。

もしそのPodが再起動されたとき、全てのInitコンテナは必ず再度実行されます。

Initコンテナの仕様の変更は、コンテナイメージのフィールドのみに制限されています。 Initコンテナのイメージフィールド値を変更すると、そのPodは再起動されます。

Initコンテナは何度も再起動およびリトライ可能なため、べき等(Idempotent)である必要があります。特に、EmptyDirsにファイルを書き込むコードは、書き込み先のファイルがすでに存在している可能性を考慮に入れる必要があります。

Initコンテナはアプリケーションコンテナの全てのフィールドを持っています。しかしKubernetesは、Initコンテナが完了と異なる状態を定義できないためreadinessProbeが使用されることを禁止しています。これはバリデーションの際に適用されます。

Initコンテナがずっと失敗し続けたままの状態を防ぐために、PodにactiveDeadlineSecondsを、コンテナにlivenessProbeをそれぞれ設定してください。activeDeadlineSecondsの設定はInitコンテナが実行中の時間にも適用されます。

Pod内の各アプリケーションコンテナとInitコンテナの名前はユニークである必要があります。他のコンテナと同じ名前を共有していた場合、バリデーションエラーが返されます。

リソース

Initコンテナの順序と実行を考えるとき、リソースの使用に関して下記のルールが適用されます。

  • 全てのInitコンテナの中で定義された最も高いリソースリクエストとリソースリミットが、有効なinitリクエスト/リミット になります。
  • Podのリソースの有効なリクエスト/リミット は、下記の2つの中のどちらか高い方となります。
    • リソースに対する全てのアプリケーションコンテナのリクエスト/リミットの合計
    • リソースに対する有効なinitリクエスト/リミット
  • スケジューリングは有効なリクエスト/リミットに基づいて実行されます。つまり、InitコンテナはPodの生存中には使用されない初期化用のリソースを確保することができます。
  • Podの有効なQoS(quality of service)ティアー は、Initコンテナとアプリケーションコンテナで同様です。

クォータとリミットは有効なPodリクエストとリミットに基づいて適用されます。

Podレベルのコントロールグループ(cgroups)は、スケジューラーと同様に、有効なPodリクエストとリミットに基づいています。

Podの再起動の理由

以下の理由によりPodは再起動し、Initコンテナの再実行も引き起こす可能性があります。

  • ユーザーが、そのPodのInitコンテナのイメージを変更するようにPodの仕様を更新する場合。アプリケーションコンテナのイメージの変更はそのアプリケーションコンテナの再起動のみ行われます。
  • そのPodのインフラストラクチャーコンテナが再起動された場合。これはあまり起きるものでなく、Nodeに対するルート権限を持ったユーザーにより行われることがあります。
  • restartPolicyAlwaysと設定されているPod内の全てのコンテナが停止され、再起動が行われた場合。およびガーベージコレクションによりInitコンテナの完了記録が失われた場合。

次の項目

4 - Pod Preset

FEATURE STATE: Kubernetes v1.6 [alpha]

このページではPodPresetについて概観します。PodPresetは、Podの作成時にそのPodに対して、Secret、Volume、VolumeMountや環境変数など、特定の情報を注入するためのオブジェクトです。

PodPresetを理解する

PodPresetはPodの作成時に追加のランタイム要求を注入するためのAPIリソースです。ユーザーはPodPresetを適用する対象のPodを指定するために、ラベルセレクターを使用します。

PodPresetの使用により、Podテンプレートの作者はPodにおいて、全ての情報を明示的に指定する必要がなくなります。この方法により、特定のServiceを使っているPodテンプレートの作者は、そのServiceについて全ての詳細を知る必要がなくなります。

クラスターでPodPresetを有効にする

ユーザーのクラスター内でPodPresetを使うためには、クラスター内の以下の項目をご確認ください。

  1. settings.k8s.io/v1alpha1/podpresetというAPIを有効にします。例えば、これはAPI Serverの --runtime-configオプションにsettings.k8s.io/v1alpha1=trueを含むことで可能になります。Minikubeにおいては、クラスターの起動時に--extra-config=apiserver.runtime-config=settings.k8s.io/v1alpha1=trueをつけることで可能です。
  2. PodPresetに対する管理コントローラーを有効にします。これを行うための1つの方法として、API Serverの--enable-admission-pluginsオプションの値にPodPresetを含む方法があります。例えば、Minikubeにおいては、クラスターの起動時に
--extra-config=apiserver.enable-admission-plugins=NamespaceLifecycle,LimitRanger,ServiceAccount,DefaultStorageClass,DefaultTolerationSeconds,NodeRestriction,MutatingAdmissionWebhook,ValidatingAdmissionWebhook,ResourceQuota,PodPreset

を追加することで可能になります。

PodPresetはどのように動くか

KubernetesはPodPresetに対する管理用コントローラーを提供し、これが有効になっている時、コントローラーはリクエストされたPod作成要求に対してPodPresetを適用します。Pod作成要求が発生した時、Kubernetesシステムは下記の処理を行います。

  1. 使用可能な全てのPodPresetを取得する。
  2. それらのPodPresetのラベルセレクターが、作成されたPod上のラベルと一致するかチェックする。
  3. PodPresetによって定義された様々なリソースを、作成されたPodにマージしようと試みる。
  4. エラーが起きた時、そのPod上でマージエラーが起きたことを説明するイベントをスローし、PodPresetからリソースを1つも注入されていないPodを作成します。
  5. PodPresetによって修正されたことを示すために、マージ後の修正されたPodにアノテーションをつけます。そのアノテーションはpodpreset.admission.kubernetes.io/podpreset-<PodPreset名>: "<リソースのバージョン>"という形式になります。

各Podは0以上のPodPresetにマッチすることができます。そして各PodPresetは0以上のPodに適用されます。単一のPodPresetが1以上のPodに適用された時、KubernetesはそのPodのSpecを修正します。envenvFromvolumeMountsへの変更があると、KubernetesはそのPod内の全てのコンテナのSpecを修正します。volumesへの変更があった場合、KubernetesはそのPodのSpecを修正します。

備考:

単一のPodPresetは必要に応じてPodのspec内の以下のフィールドを修正することができます。

  • .spec.containersフィールド
  • .spec.initContainersフィールド

特定のPodに対するPodPresetを無効にする

PodPresetによるPodの変更を受け付けたくないようなインスタンスがある場合があります。このようなケースでは、ユーザーはそのPodの.spec内に次のような形式のアノテーションを追加できます。
podpreset.admission.kubernetes.io/exclude: "true"

次の項目

PodPresetを使ったPodへのデータの注入

PodPresetの内部についてのさらなる情報は、PodPresetのデザインプロポーザルを参照してください。

5 - エフェメラルコンテナ

FEATURE STATE: Kubernetes v1.16 [alpha]

このページでは、特別な種類のコンテナであるエフェメラルコンテナの概要を説明します。エフェメラルコンテナは、トラブルシューティングなどのユーザーが開始するアクションを実行するために、すでに存在するPod内で一時的に実行するコンテナです。エフェメラルコンテナは、アプリケーションの構築ではなく、serviceの調査のために利用します。

警告: エフェメラルコンテナは初期のアルファ状態であり、本番クラスタには適しません。Kubernetesの非推奨ポリシーに従って、このアルファ機能は、将来大きく変更されたり、完全に削除される可能性があります。

エフェメラルコンテナを理解する

Podは、Kubernetesのアプリケーションの基本的なビルディングブロックです。Podは破棄可能かつ置き換え可能であることが想定されているため、一度Podが作成されると新しいコンテナを追加することはできません。その代わりに、通常はDeploymentを使用してPodを削除して置き換えます。

たとえば、再現困難なバグのトラブルシューティングなどのために、すでに存在するPodの状態を調査する必要が出てくることがあります。このような場合、既存のPod内でエフェメラルコンテナを実行することで、Podの状態を調査したり、任意のコマンドを実行したりできます。

エフェメラルコンテナとは何か?

エフェメラルコンテナは、他のコンテナと異なり、リソースや実行が保証されず、自動的に再起動されることも決してないため、アプリケーションを構築する目的には適しません。エフェメラルコンテナは、通常のコンテナと同じContainerSpecで記述されますが、多くのフィールドに互換性がなかったり、使用できなくなっています。

  • エフェメラルコンテナはポートを持つことができないため、portslivenessProbereadinessProbeなどは使えなくなっています。
  • Podリソースの割り当てはイミュータブルであるため、resourcesの設定が禁止されています。
  • 利用が許可されているフィールドの一覧については、EphemeralContainerのリファレンスドキュメントを参照してください。

エフェメラルコンテナは、直接pod.specに追加するのではなく、API内の特別なephemeralcontainersハンドラを使用して作成します。そのため、エフェメラルコンテナをkubectl editを使用して追加することはできません。

エフェメラルコンテナをPodに追加した後は、通常のコンテナのようにエフェメラルコンテナを変更または削除することはできません。

エフェメラルコンテナの用途

エフェメラルコンテナは、コンテナがクラッシュしてしまったり、コンテナイメージにデバッグ用ユーティリティが同梱されていない場合など、kubectl execでは不十分なときにインタラクティブなトラブルシューティングを行うために役立ちます。

特に、distrolessイメージを利用すると、攻撃対象領域を減らし、バグや脆弱性を露出する可能性を減らせる最小のコンテナイメージをデプロイできるようになります。distrolessイメージにはシェルもデバッグ用のユーティリティも含まれないため、kubectl execのみを使用してdistrolessイメージのトラブルシューティングを行うのは困難です。

エフェメラルコンテナを利用する場合には、他のコンテナ内のプロセスにアクセスできるように、プロセス名前空間の共有を有効にすると便利です。

エフェメラルコンテナを利用してトラブルシューティングを行う例については、デバッグ用のエフェメラルコンテナを使用してデバッグするを参照してください。

Ephemeral containers API

備考: このセクションの例を実行するには、EphemeralContainersフィーチャーゲートを有効にして、Kubernetesクライアントとサーバーのバージョンをv1.16以上にする必要があります。

このセクションの例では、API内でエフェメラルコンテナを表示する方法を示します。通常は、APIを直接呼び出すのではなく、kubectl alpha debugやその他のkubectlプラグインを使用して、これらのステップを自動化します。

エフェメラルコンテナは、Podのephemeralcontainersサブリソースを使用して作成されます。このサブリソースは、kubectl --rawを使用して確認できます。まずはじめに、以下にEphemeralContainersリストとして追加するためのエフェメラルコンテナを示します。

{
    "apiVersion": "v1",
    "kind": "EphemeralContainers",
    "metadata": {
            "name": "example-pod"
    },
    "ephemeralContainers": [{
        "command": [
            "sh"
        ],
        "image": "busybox",
        "imagePullPolicy": "IfNotPresent",
        "name": "debugger",
        "stdin": true,
        "tty": true,
        "terminationMessagePolicy": "File"
    }]
}

すでに実行中のexample-podのエフェメラルコンテナを更新するには、次のコマンドを実行します。

kubectl replace --raw /api/v1/namespaces/default/pods/example-pod/ephemeralcontainers -f ec.json

このコマンドを実行すると、新しいエフェメラルコンテナのリストが返されます。

{
   "kind":"EphemeralContainers",
   "apiVersion":"v1",
   "metadata":{
      "name":"example-pod",
      "namespace":"default",
      "selfLink":"/api/v1/namespaces/default/pods/example-pod/ephemeralcontainers",
      "uid":"a14a6d9b-62f2-4119-9d8e-e2ed6bc3a47c",
      "resourceVersion":"15886",
      "creationTimestamp":"2019-08-29T06:41:42Z"
   },
   "ephemeralContainers":[
      {
         "name":"debugger",
         "image":"busybox",
         "command":[
            "sh"
         ],
         "resources":{

         },
         "terminationMessagePolicy":"File",
         "imagePullPolicy":"IfNotPresent",
         "stdin":true,
         "tty":true
      }
   ]
}

新しく作成されたエフェメラルコンテナの状態を確認するには、kubectl describeを使用します。

kubectl describe pod example-pod
...
Ephemeral Containers:
  debugger:
    Container ID:  docker://cf81908f149e7e9213d3c3644eda55c72efaff67652a2685c1146f0ce151e80f
    Image:         busybox
    Image ID:      docker-pullable://busybox@sha256:9f1003c480699be56815db0f8146ad2e22efea85129b5b5983d0e0fb52d9ab70
    Port:          <none>
    Host Port:     <none>
    Command:
      sh
    State:          Running
      Started:      Thu, 29 Aug 2019 06:42:21 +0000
    Ready:          False
    Restart Count:  0
    Environment:    <none>
    Mounts:         <none>
...

新しいエフェメラルコンテナとやりとりをするには、他のコンテナと同じように、kubectl attachkubectl execkubectl logsなどのコマンドが利用できます。例えば、次のようなコマンドが実行できます。

kubectl attach -it example-pod -c debugger